『呼び戻せば良いのだが……。……』
 あれ?何だか不穏な雰囲気だ。
「呼び戻せばいいんだよね?」

『力がない』
「……」
『そこの娘が我の力を使ったときに、力の源であった龍の玉が割れ、吹き飛んでしまった。それ故に我は力を失い……このように幼体化してしまったのだ』
「聞こえません」

『力がないのだ!』
「そんなことありません。思い違いです。きっと使えるに違いないよ」
『……』

「ミサは、何が何でも魔界に触れたくないんだね」
「当たり前だよ!わたしのキャパシティを軽々と超えてるもん!」

「でも、ぐいぃっと無理やりキャパシティを広げてみれば案外いけるかも?」
 まほりがにっこり笑いかけてくる。
「……」

 思い起こせば、すべての発端は、まほりのかけた小さな魔法なのだ。
「まほりはわたしをどうしたいの……」
 と問いかけても、今ここにいるまほりの記憶にはないことだと思うけれど、
「魔界や天界を股にかけるくらいたくましくて、みんなにモッテモテの可愛いセイレーンにしたいな」
 ちゃーんと答えてくれる。

 セイレーンは確か、声で船乗りを惑わせるという身体の下半分が鳥で上半分が人間の伝説上の生き物だ。
「……ああ……」

 もはや人間であることすら望まれていないなんて……。
 これから、わたしはまほりとどう付き合っていけばいいんだろう?

 セイレーンとして接するってどうやればいいのだろう?
 魔界や天界を股にかけるってどうやるの?
 ……。

 しばし、思考が停止してしまう。