洞窟の中にひとたび入ると、冷たく湿った空気と青白く光る岩々が迎えてくれた。
 先の見えない蛇行した道を奥へ奥へと向かって行く。
 その間にも、ひたひたと天井から雫が落ちてきて、腕や頬を濡らす。

 そういえば、前に龍にさらわれたときに連れて行かれたのもこんな場所だった。
 ひょっとしたら、あれはここだったのかもしれない。
 しばらく歩いていくと、ひらけたところに出た。

 見覚えのある岩の台座のある広間のような場所だ。
「やっぱり、あの時の場所だ……」
 思わず漏れた呟きに、
「か、かわいい……!」
 戸田さんの黄色い声が重なった。

「え?」
 その視線の先を追うと、広間の端の方でちょろちょろと動く小さな――――
「龍……?」
 がいた。

 そのピカピカとした濃い緑の鱗につつまれた体躯を見ると、まだ生まれて間もないように見える。
 無邪気に自分の尾で遊ぶ姿は、確かに可愛い。

 でも、どうしてここに小さな龍がいるのだろう?
 焔生の龍のねぐらにいる龍ということは、焔生の龍の関係ある龍かもしくは――――
 焔生の龍そのものか、だと思うけれど……。