魔法9日目(友引)

 わたし達は合宿所から抜け出し、戸田さんの案内で龍のねぐらの洞窟の前へと来ていた。
 入口には石造りの鳥居と、洞窟と焔生の龍との縁起について刻まれた石碑があり、この洞窟が古くから焔生の龍との関わりが深いことが分かる。

 その碑文の一説が目に止まった。
『焔生の龍古来より、懸想しやすく、執着すること甚だし。龍の花嫁になんなんとするものは入るべし。ならざらんとするものは去ぬべし』。

 まるであの龍に会ったことのある人が彫ったかのような一説だ。
 それとも、ただ焔の縁伝説になぞらえただけの後世の人の創作なのかな?

 わたしが石碑を見ていると、まほりもわきから覗き込む。

 そして、
「焔生の龍の言い伝えってね、民俗学者からすると、活火山だった龍尾山の噴火を龍の大暴れに見立てているっていう説が有力らしいんだ。火山の噴火があまりにもひどいから、噴火を鎮めるために女の子を山の中に置き去りにして溶岩と心中されたっていう」
 突然、そんな話をし始める。