「ところで、コータロー。まほりの家、どうだった?めちゃくちゃ広かったでしょ?」
 幸太郎は昨晩、まほりの家に泊めてもらったのだ。
 幸太郎の家にはまほりから、しばらくわたしと幸太郎とまほりの三人で勉強合宿をすることになった、と連絡を入れてもらった。

 まほりの家は動物大好き一家で、ゴールデンレトリーバーのベスを初めとしてニシキヘビのベルガモット、イグアナのジョナサンなどなど、たくさんの動物を飼っている。
 犬の一匹くらい増えても平気、とまほりが言うので、幸太郎は犬の間そこに置いてもらうことになった。
 わたしが尋ねると、幸太郎はぴしり、とその場で固まる。

『胴が……ぎゅぎゅぎゅうっと締まって……すげえ苦しくて……。た、助けてくれ……』
 黒い目をどんどん曇らせ、淡々と言う。
 何か、怖い。
「な、何があったの?」
『……』

「あー、コータロー君何か言ってる?」
「う、うん。なぜか、心に大きな傷を負ってるっぽいんだけど……」
 わたしがそう言うと、まほりは苦笑いをする。
「なんかね、コータロー君、妙にベルガモットに気に入られちゃって……。すごくじゃれついてたんだけど、ときどきコータロー君を気絶させちゃったりして……あは」

「あは、じゃないよ!まほり!」
「大丈夫、ベルガモットだって手加減してるよ。たぶん……」
「い、いやいや、現に気絶してるんでしょ!?」
「ベルガモットにはきつく言っておくから」
『その前に、蛇は水槽の中に入れてくれ!』

 まさかニシキヘビを……放し飼いなの?
 ベルガモットって確か、体長10メートル、直径20センチの大蛇じゃなかったっけ。
 ……深く考えるのはよそう。