でも、話を聞いても、MPC……MO2……何それ、化学記号?と思考が停止しかけているわたしには、正直そのすごさがいまいち分からない。

 いや、そもそも分かりたくない。天界や魔界が出てきた時点で、わたしの出番じゃない。
 けれど、
「そんなすごい人が同じクラスにいたのに気づかなかったなんて……。すみません、椎名様」
「様なんてつけなくていいよ。でもどうしてもつけたいなら、名誉会員まほり様って読んでくれると嬉しいな」
「……」

「名誉会員まほり様、この騒ぎが収まったら是非、わたしの占いを見てください。名誉会員まほり様の目から見てどうなのか、知りたいんです」
「うん、謎男先生ほどじゃないけど、わたしも占いには興味があるから。戸田さんの占い、見てみたいなー」

「あと、良ければ今度魔法の講義をしてくれませんか?わたし、狭い範囲でしか魔法のことを知らなくて」
「うん、いいよー。わたしもちょうどサークルの活動に刺激が少なくなっていたところだし、人に教えるのも、いい気分転換になりそう」

 俄然盛り上がる二人を前にすると、わたしのアホマホサークルへのスタンスこそが変なのかもしれないとも思い始めてくる。

「……わたし、一人で龍に会いに行ってこようかな」
 疎外感から出たわたしのそんな呟きもものともせず、そのあとしばらく二人はアホマホサークルについて盛り上がっていた。

「今度わたしもサークルに入ります。イッセイ君みたいにまずビジターから入るのがお勧めですか?」
「名誉会員は、懇意にしている相手を会員へと推薦することが可能なんだ。だから、戸田さんの素行しだいでは、推薦することが出来るよ?」

「そんな!ありがたいです!ふふっ。これからの楽しみが増えちゃった」
 ……。
 ……わたしもアホマホサークルに入ろうかな。
 二人の話が終わるまで、そんな風に心が揺れていた16の夏の朝だった。