戸田さんが、『可愛いイッセイ君』とやたらと強調しながら話してくれたその話を聞いて、わたしはどうしても戸田さんに言いたくてしょうがないことが出来てしまった。

 幸太郎のことを責めるわけでもない、単純な感想を言いたくてたまらなくなる。

「戸田さんが松代君のことをとても好きなのは、分かったけど……」
「す、好きだなんて、そんな……ハッキリ言わないで」

「どうして、こんなとってもまわりくどいまねを?占い師として暗躍するより、松代君に直接、結婚相手探しなんて止めて、って言ったほうが楽だったんじゃ……?」

 そうすれば、独自の占いを開発してみたり、幸太郎に取引を持ちかけてみたり、龍の身体をのっとってみたり……というとんでもない労力は必要なかった気がする。

 わたしがそう言うと、戸田さんはあっけらかんとして、
「ふふふっ。本田さんは変なこと言うんだね。わたしが、イッセイ君の決めたことを止めさせることなんて出来るわけないの。イッセイ君の決定は絶対だもの」
 言う。

「じゃ、じゃあ……好きだって伝えて、結婚するならわたしにして、って言ってみるとかは?」
「きっとどうして急にそんなことを言うんだ、って言われちゃうもの。それに、イッセイ君に一生懸命わたしのことを考えさせるのなんて、可哀想だし、そんなの……許せない。わたしが日陰で動けばそれでいいなら、イッセイ君に負担をかけることないでしょ?ふふっ、これも愛だと思うんだ」

 衝撃的だった。まさか戸田さんがここまでの人だとは思わなかった。