戸田さんと松代君は、幼なじみで、戸田さんの後を泣きべそかいた松代君がついて行くような微笑ましい幼少時代を過ごしていたという。

 その頃から既に戸田さんは、『可愛いイッセイくん』のためなら何でも出来る、というくらいに松代君のことが好きだったらしく、その思いは、ある日松代君が言った、
「占い師はかっこいいな」
 という何気ない一言に反応して占いの勉強を始めるくらいの熱情を秘めていた。

 ある日、それとなくタロットで占いをしてあげたところ、松代君がいたく満足したのを見て、戸田さんは本腰を入れて占いの勉強をし、中学生くらいのころから、駅前に小さな露店を構えて占いの実践をするようになった。
ひとえに、松代君をもっと喜ばせるために。

 ちょうどその頃から、松代君は過剰なまでに占いに心酔するようになり、占いによって一日のスケジュールが大きく左右されるようになっていったのだという。

 「今日は恋愛運絶好調。好きな人をデートに誘うといいかも」と占いに出れば、好きな人もいないのに、誰彼構わずデートに誘い、「今日はちょっと不調かも。自重をしましょう」と出ればいくら健康体でも病院に精密検査を受けにいく……。

 とまあ尋常じゃないくらいに占い中心の生活になってしまったらしい。

 そんな様子を見て、戸田さんは、松代君が占いの結果次第で誰とでも付き合ってしまうんじゃないか、と心配していたものの、そういう事態になることはなく、今までどおり幼なじみとして親しく交流をしていた。