――――寂しい世界。
そして、その世界には、幸太郎がいない。
犬になったり半分戻ったり、ちゃんと戻ったと思えばわたしになったり、と一番面倒で騒がしかった幸太郎がいない。
昔から意識することなくそばにいた幸太郎がいない、という事実は、広大な砂漠の中一人取り残されたかのような、絶望感をともなう。
話すことも、幸太郎のとんでもない行動に突っ込みを入れることも……一切出来ない。
いたらいたで邪険にするし、鬱陶しいに違いない。
でも……それでも、いてくれたほうが何倍もいい。
少なくとも、こんなに寂しい世界じゃないはずだ。
いなくなったとたんにこんなことを思うのは、きっと、わたしの勝手なエゴだけれど。