「それで魔力の量はどうだったんだよ?」
 蓄音機の土台にあたる部分についているメーターをまほりが指さす。

「うーん、いつもの3分の1くらいかな」
「いつものって、前も量ったことがあるの?」

「うん、月いちでね。そういうのもサークルの活動の中に入ってるから」
「そ、そうなんだ……」
 知らなかった。まほりは奥が深い。

「山の魔力が減ったってことは……火恩寺君が言うみたいに龍に何かあったって考えるのが自然だと思うんだ。この龍尾山は焔生の龍に守られているはずだから」
「やっぱりそうか……」

「龍に何かあったら、どうなるの?」
「何か、良くないことがじゃんじゃん起きちゃーうかも?」
 何だか急にテンションを高くしてまほりが言う。

「うん、知ってたよ……。まほりがそういう何か起きちゃうの好きだって言うのは」
 思わずまほりのテンションに乗せられてそう口にしてから、まずい、と思った。
 まほりも火恩寺君も怪訝そうな顔でわたしを見ているからだ。

「気味のわりぃ野郎だな……」
「うーん、でも……」
 まほりは真っ直ぐな眼差しでわたしの目を見る。

「え、えーと……椎名?」

 じぃー……じぃー……。
 と音がしそうなほどに見つめられて、どうしていいか分からなくなる。

「あの椎名さん、お取り込み中のところ悪いんですが……」
 そうしている間に、所在なげにしていた火恩寺君が、
「俺はこの辺で親父達に報告しに戻ります。龍に何かあったとなりゃ一大事なんで」
 そう言った。

「うん、またねー」
 とまほりが声をかけるや否や火恩寺君はすぐさま木に登り、木から屋根、と亙り軽々と宿舎を越えて出て行ってしまった。