「お、いや風呂はちょっと……」
 ちょっとどころか絶対無理!断固拒否、と言いたいところだが、見た目が幸太郎なのに変に拒絶しても、変な印象を与えかねないので、濁しながらそう言ってみる。

 すると、
「へー?何か入れない理由でもあるわけ?実は身体が女の子になっちゃったとか?」
 目を爛々と輝かせながら、紀瀬がそう食いついてくる。

「そ、そんなわけあるかよ」
 中身が女の子になっちゃっています。

「けど、お前今日はなんかおかしいし。なーんかある気がするんだよなー。ちょっとそこで脱げよ」
 と言いながら、寄ってくる。

「な、何で脱がなくちゃなんねーんだよ!」
「お前、練習の前も後もどっか別のとこで着替えてきたろ?怪しいんだよなー」
「そ、そんなのたまたまだって……」

 さすがに男子に囲まれながら着替えるのは嫌で、こっそり別室で着替えたのは事実だけれど……。
 無駄に観察眼が鋭すぎる。

「あと、ミサキちゃんだっけ?女の子の名前聞いて回ってるのも、何かある気がするし。つか、いいから脱げ」
 そう言いながら、ぴらぴら、とTシャツの裾を引っぱってくる。
 面倒くさい、ひじょーに面倒くさいよ、紀瀬!

「変なのはお前だ、ダイチ。お前は女のことばっかり考えてるから、そんな発想になるんだろうが」
 と誠二がフォローに入ってくれたのは良いものの、
「メンドクセーやり取りはもういいじゃん、風呂いこーぜ。な?」
 宗高がそう言って、背中を叩いてくる。

「い、いや、俺は……」
 これだとお風呂に行く流れになってしまう。それは諸々の意味で困る。
 わたしが渋っていると、今度は斉藤が怪訝そうな顔をする。