手がかりを探し損ねたわたしをその後待っていたのは、幸太郎の身体になってしまったゆえの……厄介な問題だった。
 あの後わたしは、穂波君と松代君を手伝ってから、幸太郎の部屋を探してそこに戻った。

 ドアを開けるや否や、
「コータロー、風呂風呂、風呂行こーぜ!」
 と元気な声が飛んで来たのと同時に頭をどつかれた。

 これは確か、宗高。隣のクラスの、小柄だけれど、いつもハイテンションなイメージのある男子生徒だ。
「頭叩いて、これ以上コータローがアホになったらどうすんだよ」

 後から声が飛んできたと思ったら、大柄の男子生徒が出てくる。幸太郎がいつも誠二と呼んでいる、これまた隣のクラスの生徒だ。
 その後から紀瀬と斉藤もぞろぞろと出てきた。

「よ。あれから全然返ってこないから、女子部屋に転がり込んでるのかと思った」
「い、いや、それはないけど……」
「それより、風呂行くだろ?」

 斉藤がフェイスタオルを投げて渡してくる。
 それを慌てて受け取りながらも、わたしは半分状況を把握しきれていなかった。

「お風呂って……わ俺も一緒に行くの?」
 この人達とわたしがお風呂?何のギャグ?と思ったのだ。

 けれど、
「お風呂、って……。何で女みたいなしゃべり方してんだよ、お前」
 誠二の怪訝そうな言葉で、わたしはハッとした。

 そうだった。今のわたしは、『わたし』の心を持っているけれど、見た目はまがいようもなく幸太郎なのだ。