どこからか祭囃子が聞こえる。
 足元からカランコロンと下駄の音がして、わたしは自分の居場所を思い出す。
 そうそう、人いきれの中、慣れない下駄をはいて窮屈な浴衣を着て、ゆき姉ちゃんに手を引かれていたのだ。
 お小遣いをもらってゆき姉ちゃんと二人、夏祭りにやって来た。

 道々、ゆき姉ちゃんは知り合いに会うたび立ち話をするので、退屈したわたしは、その間、屋台を冷やかして時間をつぶしていた。
 亀すくい屋の前で亀をひとしきり眺めて、さてゆき姉ちゃんはどうしたかな、と見てみるとさっきゆき姉とその友達が話していた場所には誰も居なくなっていた。

 あせって辺りを見まわしても、どこにも見当たらないので、ゆき姉ちゃん!と名前を呼びながら、探し回った。
 何度も大人とぶつかったあと、一人の少年にぶつかった。

 目が明るく光る少年だ。
 わたしと同い年くらい?
 少年はお母さんと思われる女性に手を引かれていた。