――――ワフワフッ!
 
そんなやり取りをしていると、さっきまで紀瀬君のペットの柴犬と吠えあっていたタツヒコが戻ってきた。
 何やら慌てたようにして、吠えながら駆けてくるので、吠え声を読解してみることにする。

 多分――――
『学校の敷地内に猿が出ました、ご主人』
 だ。
 犬の言葉を読みとるのには少々自信がある。

「魔猿が出たみたい」
 わたしが二人にそう言うと、
「まえん……。うわ、俺の願望まで反映されてるのか!」
 横堀君が感激したような声をあげる。

「横堀……まさか魔猿の存在を忘れているわけじゃないよね?」
「いや、逆にそれが日常的なものになってるのに俺はビックリだけどな……」

「横堀君は猿に会ったことないんだね」
「会ったこと、はねーな。昔に見たことはあるけど」

 魔猿はここのところ頻繁にわたし達の町を荒らしに来る、悪い猿だ。
 いつも悪さをしては、何だかかっこいい様な悪いような名前のヒーローに倒されている。

「ケンエンジャーが退治してくれると思うけど、冷やかしに行ってみようか?」
「カズシ、性格悪いよ、その言い方……」
「つ、つーかさ、お前らちょっとくらい周り見渡そうぜ?」

 横堀君は神妙な調子でそう言いながら、周囲に注意を払っている。
「横堀君は、よく見渡してるね」
「いや、本田、そういうことが言いたいんじゃなくてだな――――」

『キキィ!』
 横堀君の言葉に甲高い声が重なった。