「横堀、ここは俺の出番だから。引っ込んでいてくれるかな?」
 とまあ、和史と横堀君がいつの間にかわたしと松代君との間に立ちはだかっていた。

「横堀に穂波か……」
 松代君が苦々しい声をあげる。
「ミサキ、今日もかわいいね。迎えに来たよ、一緒に帰ろう」
 和史は笑顔で振り向いて、そう言ってくる。

「カズシは今日も気持ち悪いね、早く何とかしてよ」
「きついミサキもいいな。罵倒されると脳内でアドレナリンが花となって舞うよ」
「……」

 わたしが無言で睨んでいると、ようやく和史はすごすごとして松代君に向き直る。
 甘ったるい台詞を言うのはいいけれど、そういう性格が災いして、本校他校ひっくるめて主に男子の反感を買っているのはいただけない。

 わたしが巻き込まれる形になっているのはもっといただけない。
「誰が幼なじみでも、本田はきついのな……」

 と横堀君が呟くか否かの間に、
「ぎゃん!」
 和史に頭突きをお見舞いされた松代君の短い悲鳴がして、ことは終わった。

 本日の業務は終了だ。
 今日も世はこともなし、変なことが起きないって最高だよね。