噴水に着くと、じゃばじゃばと音を立てながら、水遊びをしている幸太郎の姿が見えた。
 ジャージのズボンを膝までめくりあげて、噴出した水の当たらない位置で足をつけてじゃばじゃばしている。
 何やってるの、こいつは……。用事って水遊びなわけ?

 わたしがあきれ返っていると、幸太郎はわたしに気がついて、
「お、遅かったじゃん」
 水の中から勢いよく飛びでてくる。

 ざぱあと水しぶきがあがって、わたしの腕にも少しだけ飛んできた。
「もう、水が飛んでる!」
「悪い悪いー」
 楽しいとは思っても、悪いとは思ってなさそうな笑い顔で、幸太郎は言う。

「用事って、わたしに水をかけることなの?」
 少しだけ機嫌を損ねて、わたしは言う。
「ちげーよ、暑かったからつい水浴びしてただけ」
「思考回路やられてるね……」

 普通は暑いからって噴水で水浴びはしないと思う。
「今朝のことの続きを話そうと思ってさ」
 足をぱたぱた振るって水を落とすと、じかに運動靴を履く。

「うわー、靴ぬれるじゃん……」
「気にしない気にしない。それより、本題」
「うん」

「えーと、朝のことで話したかったのはな……」
 視線を上のほうにやる。
 わたしもつられて上を見る。
 なにもない。強いて言うなら、青い空がある。