みんなは、心配して色々と言ってくれているのは分かったけれど、わたし自身は、どうしたらいいのか分からなかった。
 生徒や先生があふれかえる中で、鬼ごっこ状態になったらとても逃げ切れない。
 かといって、参加しないで一人残っていたら、何かあったとき孤立無援だ。
 でも、参加したら、したでみんなに迷惑をかけるのもありうるし。

 と散々結局考えた末、参加することにした。
 決め手は、まあ、どこにいても、きっと変なことを起こるときは起こるだろう、というある種の達観なのだけれど。

 そうして、バスの中で龍への対策を練っていたのはいいのだけれど……。
 龍対策本部には不穏な空気が満ち始めていた。
 それは、穂波君が昨日も話していた付き合うふりをして龍の目をごまかす、という案を話したことがきっかけだった。

「ぜってェ駄目!そんな無理やり付き合うみたいなの駄目だって!」
 幸太郎が反射神経かと思うほどのスピードでそう反応する。

 一方でまほりは、
「ミサがいいならいいと思うなー、わたしは」
 のんびりとした調子で言うので、自然と穂波君は幸太郎に矛先をむけるかたちになり、
「横堀ってちょっと過保護じゃないかな。本田さんに無理強いさせたくないっていう、感情は分からなくもないけど」
 そんなことを言う。

 そうすると幸太郎は眉を寄せて、たちまち不穏な空気が出来上がってしまった。