それにしても、どうして龍はこんな場所にわたしを連れてきたんだろう?
 夢の中の少年が穂波君だとか、わたしの昔好きだった俳優さんが穂波君のお父さんだとか……。
 そんなことをすっかり忘れていて、わたしがどれだけ忘れっぽいのかは分かったけれど、それに何か大きな意味があるんだろうか。

 そんなことを考えていたら、いつの間にか場面は変わり、ペンションのロビーで明日の予定についてスタッフを名乗る人から説明をされていた。

 その人は物語の撮影場所やそのシーンの書かれた紙と台本をお父さんに、わたしと幸太郎にはカラー刷りのキャラクターかかれた紙を渡して説明を始めた。
 幸太郎のお父さんは、機材の運搬の仕事があるからといって、技術スタッフ達とどこかに行ってしまった。

 “劇場版超犬戦隊ケンエンジャー”は、テレビ版で魔猿という悪事をはたらく猿達とケンエンジャーとが和解し、大団円を迎えたその先の物語らしい。
 一時期の安寧を得たものの新たなる刺客が現れて、街を混乱に巻き込んだため、再びケンエンジャーが動き出す、というストーリーになっている。

 渡された写真とキャラクター説明のある紙を見ると、「いぬずきのごにんがあつまって、ケンエンジャーだ!」と大きく書かれていた。
 そしてその下にそれぞれの人物の写真入りの相関図がある。

 犬飼焔(ドッグレッド)と犬飼爽(ドッグブルー)というのが兄弟で、犬吠埼小百合(ドッグホワイト)と犬吠埼小春が姉妹。
 犬吠埼師匠というのが小百合と小春の祖父でその四人の武道の師範。
 その他、犬吠埼家代々の家臣という狗神家の墨心(ドッグブラック)、犬吠埼道場とライバル関係ある道場の師範代の黄和田乾(ドッグイエロー)。
 ケンエンジャーと敵対する悪の一族、魔猿。

 という内容が、すべて平仮名か片仮名で書かれている。