幸太郎のお父さんは地元自治体のフィルムコミッションの仕事をしている。

 わたしと幸太郎が小学校1年生になった夏休み、映画製作会社から龍尾山の山腹にある焔生神社の本宮でロケーション撮影がしたい、という依頼が来たらしい。

 くしくも、地元の出身である程度の土地勘のあるhitoshiという俳優がその映画に参加していること、その俳優が幸太郎とわたしのお父さんの共通の知り合いであること、その映画がわたしと幸太郎の好きな番組の映画版であることなどが重なり、映画の撮影の見学に来ないか、という誘いも同時にやって来た。

 当時は知るよしもなかったけれど、実は地元に本社のある企業がスポンサーになったことも、龍尾山での撮影の決め手になったらしかった。

 わたしは、その話を幸太郎のお父さんから聞いて、二つ返事をして、一緒に連れて行ってもらうことになったのだ。
 麓の駅でロケ隊と待ち合わせて、そこからのバス移動に同行させてもらう予定になっていた。

 一日目は、幸太郎のお父さんや焔生神社の管理者やその他もろもろの自治体の人たちと、メインスタッフとの打ち合わせで終わった。   
 夜は龍尾山中腹にあるカルデラ湖沿いのペンションに泊まることになっているので、バスでペンションへと向かう。