ただ、幸太郎がブルーよりレッドの方がかっこいい、とは言わないのが不思議だった。

 幸太郎はその番組、“超犬戦隊(チョウケンセンタイ)ケンエンジャー”のドッグレッドが好きだったので、てっきりそういうと思った。

 レッドのほうがかっこいいのに、ブルーがいいなんて変だ、という意味で怒っていると思ったからだ。
 けれど、いつだってブルーはかっこよくない、の一点張りだった。
 レッドのレの字も出さない。

 そしてなぜか、今こうして見ているだけのわたし自身の胸が痛くなるくらい、必死にそれを訴えかけてくる。
 何が何でも、レッドのほうがかっこいい、ではなくて、ブルーはかっこよくないのだ、と幸太郎はわたしに伝えたかったらしかった。
 及ばぬ舌で。

 当時は自分も今より遙かに小さかったから、気づかなかったけれど、今こうして見てみると、幸太郎はわたしに何か伝えたかったのかもしれない、と思う。
 そのドッグブルーというキャラクターを嫌がる意味がきっとそうなのかもしれない。
 ドッグブルー。

 穂波君を見て幸太郎がそう言ったのはまだ記憶に新しい。
 その時は、何のことだか思い出せなかったけれど、今なら思い出せる気がする。

 それは多分そう――――
 あの夢に繫がるのだ。

 目の前の小さな幸太郎の姿は靄の中に溶けていき、オレンジ色のいくつもの灯篭の光が目の前に現れた。