光の渦の先でわたしはひたすら落下していた。星のようにキラキラ瞬くものが左右を下から上へと逃げていき、足元からもっと大きな光が迫ってくる。
 草履の足が光でまともに直視できなくなったとき、わたしは目をつむった。

「奴らを倒さないかぎり、大猿明神は復活するんだよ。犬吠崎(イヌボウサキ)師匠もそう言ってただろ」
「倒す以外の方法があると思うんだ」
 しばらくして誰かの語気の荒い声がして目を開けると、目の前には板敷きの部屋が広がっていた。

「それ以外の方法ってなんだよ。奴らがいる限り、小春の危険が増えるだけなんだぞ?」
「それは分かってるけど……」
 互いに対面に座ったそれぞれ赤と青の上衣に紺袴を履いた少年が、上座となるこちらに視線を送ってくる。

 良く見るとそれは幸太郎と穂波君のようだった。
 小春って誰だろう。

「昨日からそんな話ばっかりしてるね。焔も爽も少し頭冷やしたほうが良いんじゃない?ね、小春?」
 わたしの向かいに座っていた少女がそう笑いかけてくる。

 その少女はなぜかまほりの顔をしていた。
 小春って、わたしのこと?これは夢?

 身体を動かしてみると、紺袴がさわさわという音を立てる。
 いつの間にか、白の筒袖の上衣と袴という服装に変わっていた。