「声かけづらいな……」

 思わず出た呟きに、
「じゃあ、声かけるのやめようか?」
「そうだな」
「そうだね~。後輩にうつつを抜かしてるコータロー君は、放置決定だね」
 と三人の声が矢継ぎ早に飛んでくる。

「三人とも何なの、一体……」
 そんなやり取りをしていると、紀瀬がこっちに気づいて、
「お、ミーサキちゃ~ん!」
 何とも言いがたいイントネーションで声をかけながら、手を振ってくる。

「え、ミサキちゃん?魔法少女マホリンもいるじゃん」
 斉藤もぶんぶん手を振ってくる。そのせいで、人の群れがいっせいにこっちを向き、女の子達と話をしていた幸太郎もこちらに気づく。
「ミサキ?来てるなら、声かけろって」

 そう言いながら、頭に巻いていたタオルを外すと、
「セイジとムネタカがもう来るらしいから、俺ここで一旦休憩ー」
 斉藤と紀瀬にそう言ってこちらに出てくる。

「マジで?この客を二人でさばけと!?」
「ミサキちゃ~ん、今度デートしよ?」
 文句言う斉藤と、焼きそばを焼く手を止めずに手を振ってくる紀瀬に、
「ごめんね、コータロー借りるね」
 と声をかける。

 二人は、笑ってオッケー楽しんできて、と言ってくれた。
 けれど、
「まぁた、本田先輩だよー」
「何なんだろーあの人ー。タイミング悪~」
 と小さな呟きが耳に入ってきてしまう。

 聞こえよがしな声のトーンで、少なからずわたしのことを面白く思っていない人の言葉だとは思ったけれど、内容は良く理解できなかった。
 また、ってなんだろう。