「横堀先輩ー、わたしも一皿くださ~い」
「わたしも~」
 見たことのある女の子たちが次々に声をあげる。
 うちの学校の子かな。
 
それに横堀先輩って言っていたし、幸太郎がこの先にいるのかもしれない。
 そう思って人だかりの裏側にまわると、幸太郎と一緒にサッカー部の3馬鹿と称される紀瀬と斉藤の姿が見えた。
 その奥に焼きそばの麺を高く打ち上げ、それをお皿の上にのせるパフォーマンスをする幸太郎の姿も見えた。
 拍手の原因はこれなんだ……。

「コータロー君、張り切ってるね」
 とん、と肩に何か当たる、と思えば、まほりの尊敬しているらしい極黒謎男先生の頭がわたしの肩に当たってくる。
 すごい形相の顔のすぐそばにあって、一瞬ぎょっとした。

「ま、まほり……謎男先生が頭突きしてくるよ」
「ごめんごめん」
 と言いながら彫像を持ち直す。

「それより、ミサ。コータロー君に声かけなくていいの?」
「あ、そうだね。コ――――」
「先輩ー、抜けられないんですかー?一緒に回りましょーよ」
「うん、先輩と一緒だと楽しそう。先輩一緒に行きましょう?」
 呼びかけようとした声に女の子の声が重なり、出鼻をくじかれてしまう。

「ごめんなー、父さんに店番まかされてて抜けられねーの。それに約束があるんだ、俺」
 と幸太郎は言うけれど、女の子たちはまだ粘る様子で、行きましょうよ、と声をかけている。
 これってモテているっていうのかな。幸太郎が女の子に誘われているのなんて、始めてみたけれど。