魔法5日目(仏滅)


 “最後の花嫁になってくれませんか?”
 火恩寺君にはそう言われたけれど、その日、なぜかわたしはその他にも誘いを受けることになる。

 昼休みには、約束をしていた穂波君が中庭にやって来て開口一番に、
「本田さん。良かったら、明日の夏祭り、一緒に行かない?」
 と誘ってきた。

 昼食の最中には、わたしの居場所をなぜか把握していた松代君のお付きの人がやって来て、
「坊ちゃまは本日、仏滅のため部活動をお休みしておりますので、私が代わりにやって来ました」
 と言ってわたしに手紙を差し出した。

 仏滅で休みってありなの!?という突っ込みを胸におきつつ、受け取ると、手紙を読んだ。

“運命の女、本田美咲へ。
明日の夏祭りに一緒に行こうではないか。
本日は、仏も滅する日ゆえに、代わりを立てたのは申し訳なく思う。
良ければ明日の6時、君の家まで車で迎えに行く。
松代一誠“。

 そんな内容の上、一誠の『誠』の字にかかるようにして印鑑まで押されている手紙だった。
 普通の手紙に、ここまでする必要あるのかな?と思う。
 それに取引に応じたわけでもないのに、運命の女と呼ばれてしまっているのはなぜだろう。

「坊ちゃまへのご返事は、どういたしますか。本田さん」
 そうお付の人に尋ねられ、わたしは思わず、周囲を見回す。
 隣のまほりに幸太郎、向かいの穂波君に火恩寺君……。

「もしかして、俺も誘ったから返事に困ってる?」
 わたしの視線に気がついた穂波君がそう言う。
「ううん、そうじゃなくて。どうせならみんなで行かない?って誘おうと思ったんだ。まほりも、夜なら空いてるでしょ?」
 わたしがそう言うと、なぜかまほりは微妙な顔をする。

「空いてるし、ミサと行けるの楽しそーだけどー……」
 そう言葉尻を濁し、他のメンツを見渡す。
「並々ならぬがっかり感が漂ってるね」
「気のせいだよ。俺は本田さんと行けるなら、人数なんて気にしないよ」

「ふ~ん、そう?」
 まほりがにやりと笑うと、穂波君が苦笑いする。
「何そのやり取り?」
「ううん、何でもなーい。一緒に行こうね、ミサ?」
 語尾にハートマークをつけるような言い方でまほりが言い、穂波君がため息をつく。
 何なんだろうこの二人。