そして、壁のカレンダーを見る。
 幸太郎が犬になってしまって、もう5日目だ。
 そろそろ幸太郎が犬の姿というのにも違和感を覚えなくなってしまっているけれど、このままっていうわけには行かない。
 今はまだ夏休みだから良いけれど、学校が始まったら幸太郎の家族にも説明がつかなくなってしまう。

 “運命の女になる代わりに、魔法を解く方法を得る”。
 松代君との交換条件が頭に浮かんだ。

 けれど、あの場に戸田さんが介入したことで、その取引はおじゃんになってしまった。
 ドロップスが松代君の手元にない以上、彼はわたしと取引をすることが出来ないわけだし。
だとしても、もし戸田さんが掲げていたあのドロップスさえあれば、魔法が解けるかもしれない。

 一粒くらいドロップスを譲ってくれれば、幸太郎を元に戻すことが出来る。
 もっとも、あのドロップスにそんな力があればの話だけど。

 戸田さんに一粒ちょうだい、ってお願い出来ないかな?
 松代君とのやり取りを見ておきながら、そんな風にお願いするのって、図々しいかな、やっぱり。