魔法5日目(仏滅)

 その日、朝起きて2階の自室からダイニングへと降りていくと、そこにはなぜか火恩寺君がいて、出社前のお父さんと話をしながら朝ご飯を食べていた。
 昨日屋根の上からの登場を見ているので、ひょっとしたら今日も家のどこかにいるのかも、という予防線を張っておいたからそうは驚かなかったけれど、寝起きに出くわすと視覚的な意味で衝撃的だ。

 金髪に小麦色の肌、黄緑のタンクトップという組み合わせは、寝覚めの目には痛い。
 わたしを見とがめると、
「姐御、おはようございます。失礼させていただいてます」
 と元気な声で挨拶してくれるのも、耳に痛い。

「おはようー」
 寝ぼけた頭を抱えたまま顔を洗い、髪を整え、ようやく頭がはっきりし始めたところで、あることを思い立つ。
 縁結びのおまじないのことを火恩寺君に聞いてみよう。
 わたしが洗面所から帰ると、ゆき姉ちゃんも降りてきていて、食卓についていた。

 そしてさっそく火恩寺君にデートの誘いを開始している。
 うちの家族って、ものすごく柔軟に出来ているなあ~とお母さんのよそってくれたご飯に納豆を混ぜ込みながら思っていた。
 お父さんなんて、火恩寺君のことをタツと呼び出しているし、お母さんに至ってはタッちゃんなんて呼んでいる。
 わたしだけ取り残されている感があるけれど、家ではいつものことなので気にしない。