何か答えを求めるような穂波君の眼差しに、どうしていいのかと困り果てたわたしは、
「え、えーと、穂波君って専業主夫希望……?」
 ぼんやり濁した返答をする。

「外に働きに出るよ。でも、心の中はいつだって奥さんを待っているんだ」
 ああ、もう既に分からない……。
「ああ、話し込んじゃったね。ごめん引き止めて」
「ううん」

「一緒に帰ろう、と言いたいところだけど、今日のところはやめておく。……も必要だし」
「え?」
 最後のところが良く聞き取れなかった。

「何でもないよ。実はこれから妹を保育園に迎えにいかなくちゃいけなくて。だから、誘わない。残念だけど」
「そうなんだ?」
 あの、手先の器用な妹さんかな。

 わたしがそんなことを考えていると、
「それじゃ俺行くね。本田さんも気をつけて帰って。昼間のこともあるし」
 穂波君はバッグを肩にかけ直すと、そう言った。

「うん、ありがとう。また明日」
 わたしが手を振ると、穂波君も振り返して、それから踵を返し去っていった。
 さてと、わたしも帰ろうかな。

 まほりは部活が遅くまであるらしいし、幸太郎を探して一緒に帰ろうかな。
 そう思って玄関まで下りていくと、タイミングよくそこには幸太郎が待っていた。