高塚先輩は、両手を顔の前で合わせると、
「お願いだから、本田さぁん。火恩寺に聞いてきて~。あわよくばお守りもらってきて~。高校最後の夏に一人なんていやぁ!」
 しまいには猫なで声になって、そう言ってくる。

「わ、分かりました。もしも機会があったら聞いておきますね」
 そんな風に言われたら、こう答えるしかなくなる。
「いいなー高塚。本田、わたしにももらって来てよ?」

 白木先輩が便乗してそう言うや否や、
「彼氏出来たやつは黙っとけボケェェ!お守りにすがるしかないわたしに譲れ、バカァァ!」
 高塚先輩の情念満タンの声が飛ぶ。
 ああ、何だかもう、どうしたらいいのやら。

「ははは……」
 わたしの含めその場にいたみんなが薄笑いを浮かべる。
 皆笑っとけ、笑って誤魔化しておけという雰囲気が満ちていた。

 もう夏休みも中盤過ぎた今になって、もしお守りパワーで彼氏が出来きるとしても、ほんとギリギリなスケジュールだな、という突っ込みがみんなの胸の中にあったのだと思う。
 そんな時ようやく、鰐淵先生の集合の合図がかかりホッとしたのだった。