「何か言いたそうな顔だな?」
「いえ気のせいです」
「まあ、良いが。そのようにその占い師は言っていてな。僕はさっそくクラスの座席表を拝借し、角度を計測したところ、ちょうど北西にいた君を探し当てた」

「そ、そこまでするんだ」
「坊ちゃまは占いに全幅の信頼を置いているのです」
「はあ」
「その占い師の占いは良く当たるのだ。比較的最近人づてに紹介されたのだが、僕の身の回りで起こる事象すべてを言い当てている」

「例えば?」
「そうだな……“明日は8時20分に登校するですぅ、華道部の活動に参加するですぅ、夕食はベトナム料理の予定ですぅ”」
「それ占いじゃない!最後のなんてもう、予定ですぅとか言ってるし!」
 左手が縛られてなければ、額を弾いているところだ。

「君はやかましいな。そんな細かいことはいいんだ。当たっていたのだからな」
「何かもう、帰って良いですか?」
「何を言っている?本題はこれからだろう」
「だって、色々がめんどくさいです」

「占い師の言うとおり、君にすぐにでも愛を囁きに行こうとしたのだが、何分六曜との兼ね合いが上手くいかなくてな。今日の今日という日まで遅れてしまった」
 ああ、スルーされたよ。
 仕方なく、わたしも話しにのることにする。
 この場からされる方法があるとするなら、きっと、話が終わったときしかなさそうだ。

「六曜っていうと、あの大安とか仏滅とかいう?」
「そうだ。僕自身の予定と六曜上の吉凶とが上手くかみ合わなくてな」

 ああ、そういえば、昨日一昨日と、階段の辺りで変な声を聞いたっけ。
 先勝がどうの、友引がどうのと言って去っていった影。
 あれはもしかするとこの男子生徒なのかもしれない