男子生徒は椅子に座りなおすと、居住まいを正し、それから再び口を開いた。
「先日通いつけの占い師に、強い運命の力を感じる、と言い呼びつけられた」
「通いつけの占い師……ですか」
 とても気になるワードが出てきたけれど、ここで引っかかっちゃいけないんだろうな。

「その占い師は、あらゆる占いの研究に励んでいるのだが、最近独自の占いを開発したらしくてな。その占いを伝えに、僕を呼びつけたのだというのだ」
「それで、その占いの結果と、わたしにふぁむたるになってくれというのが関係あるのですか?」
「ファム・ファタールだ。運命の女でも可」
 すかさず手厳しい修正が入る。

「じゃ、じゃあ、運命の女になってくれというのに関係が?」

「ああ。“ボクの古今東西すべての占いを混ぜ込んだブッコミ占いによれば、キミの席の北西の方角に運命の人がいるですぅ!一緒にいれば、金運、愛情運、学業仕事運うなぎのぼりのすんばらしい相手ですぅ!ソウルメイトと言っても差し支えないですぅ!今すぐその子のところに言って、愛をささやくですぅ!”」

 声色がツートーンくらい高く変わって、男子生徒は言った。
 ただ、きりりと引き締まった表情のまま言うので、声とのアンバランスさが際立っていた。
「……」

 ブッコミ占いってどういうセンス。
 ですぅって何だよ。