戸田さんについていくと、実技棟の廊下へと入っていくことになった。
 生物室や化学実験室、物理実験室、それぞれの準備室のある1階の階段から、2階へと上がっていく。実技棟では多くの文化部が活動しているはずだ。

 いつもこの辺りを通ると、上の階から軽音部のギターやベースの音と、吹奏楽部の金管や木管の音が混じって聞こえるのだ。
 今も個別練習の音が少しだけ漏れ聞こえている。
 階段を上がり終わり、家庭科室や茶室などの並ぶ廊下を少し行ったところで、戸田さんはある教室の戸を開けた。
 そして資料室、とかかれたその部屋の中へと促す。

「お先にどうぞ、本田さん」
「うん」
 促されるまま中に入ると、幸太郎を通し、戸田さんは最後に中に入ってきた。
 そして、戸田さんは戸を閉めると、後ろ手で鍵をかける。

『え!?』
「え!?」
 どうして鍵をかけるの、と思う間もなく、
「ごめんね、本田さん……」
 素早く間合いをつめてきた戸田さんに、みぞおちを突かれた。

「ぐ、ぐぇっ!」
 今日のわたし、こんなのばっか……。
 涙に曇る視界を置き去りにして、わたしは本日二度目の気絶をした。
『ミサキ!』
 そんな幸太郎の呼び声を聞きながら。