けれど、ふと気づくと、こういうご飯の時間には、いつだって、これくれあれくれ、とうるさい幸太郎が妙に静かにして、何か考え込んでいる様子だった。
「具合良くないの?」
 とわたしが声をかけると、見上げて浮かない表情をつくる。

『ちょー元気。しょうが焼きくれ』
 とあまり覇気がない調子で言う。
 いや、どう見ても元気じゃないでしょ、と思ったけれど、深く突っ込んで欲しくなさそうなので何も言わなかった。

 元に戻れなかったことが、ショックだったのかな。やっぱり、と思ったからだ。
 食事もたけなわになって来た頃、
「もっと食べてよ、本田さん。何だったら俺があーんしても良いよ」
 と穂波君が、自分の分のおかずを差し出そうとしてくる。

「け、結構です」
「じゃあわたしがあーんしよっか。ミサ、あーん?」
 まほりが穂波君の言葉にのっかり、ブルーベリーゼリーを差し出してくるが、その目が半開きで恐ろしいことになっている。
 もはや気力で起きている感じだ。

「まほり、少し寝てから部活戻ったほうが良いんじゃないかな……」
 ただ、折角なのでブルーベリーゼリーは一口もらう。
「そうだねー」
 と言いながら、目をあけたまま魂が抜けるようにして眠ってしまう。

「ま、まほり……こわいな」
 わたしは、まほりの指からスプーンを離すと、ケースの中にしまう。
「パンチ効いてますね、さすが椎名さんだ」
 火恩寺君がまほりを尊敬の眼差しで見ている。

「コンパクトに眠れていいね」
 穂波君も、微笑ましいものを見るかのようにしてまほりを見る。
 そんな様子を見ていると、まるで、家族でピクニックに来たような錯覚をする。
 何日か前には、こんな風になるとは思いもしなかった。
 わたしは穂波君を同じ部活のメンバーだと知らなくて、火恩寺君のことを忘れていたんだから。