魔法4日目(先負)

 逃げた幸太郎とわたしは、部活で使われていない様子の手ごろな教室に身を潜め、昼休みになったら、まほりと穂波君と合流した。
 いつもお昼にしていた中庭にある東屋は、昨日の一件により今やブルーシートがかかっていて使用禁止状態になっていた。
 仕方ないので、中庭のツツジの植え込みの縁石の上に座って、昼食にすることにする。
 そして、みんなで穂波君お手製のお弁当を食べることになったのだった。

 わたしのために用意してくれたお弁当は、宣言どおりのハート型のハムを散らせた、キヌアサラダに、しょうが焼き、ひじきの煮物、菜の花のごまあえ、ご飯、そしてデザートには手作りマンゴープリンという、バランスに富んだものだった。
 これだけのものを、用意するのには、相当な手間がかかると思うし、素直に感動してしまう。

 わざとイカばかりをリクエストしていたまほりには、イカそうめんの春雨サラダ、里芋とイカの煮もの、わざとイカばかりをリクエストしていたまほりには、イカそうめんのほうれん草サラダ、里芋とイカの煮もの、イカ墨スパゲティに、ブルーベリーゼリーとまあ、リクエストに添いつつも、まともな昼食を用意してくれているのだった。
 そして、
「椎名さん目が疲れてるって言っていたから。ブルーベリーのもの入れてみたよ」
と言い募るのを聞いて、
「フードコーディネーターみたい」
 と思わず突っ込んでしまった。

 そうやって、口にしたら、
「じゃあ本田さんの食生活コーディネートしていい?」と切り替えされた。
 冗談なのか本気なのか分からないけれど、さっきのこともあって、少しだけドキっとしたのは秘密だ。

 途中、わたしにさっきのことを謝りに来た、という火恩寺君が木の上からやって来て、彼も食事の席に加わった。
 というか、
「姐御先程はすみません!いくら謝り倒しても足りないのは分かっています!火恩寺龍彦、この命をもってお詫びを!」
 という不穏なことを言い出したので、命を大事にね、まあまあご飯でも食べながら、と濁したというのが正しいのだけれど。
 
 そんなわけで、わりと和やかな昼食をとっていた。