目覚めるとそこには白い天井があった。
 少しだけ身体を動かすと、衣擦れがして、布団の上に寝ていることを知る。

 えーと、一体何がどうなったんだっけ?
 少しだけ頭が覚醒してくると、ひりひりとした顔の痛みと額の上の冷たい感覚が意識される。
 ボールが顔に当たって、それからどうしたんだろう?

 ぼんやりした頭を抱えながら、布団の中で身体をよじると、
「目が覚めた?」
 近くから優しい声がかかる。

「え?」
 わたしが声のするほうに顔を向けると、
「幸い鼻の軟骨は折れてなかったみたいだよ」
 穂波君がそこにいた。

 座っていた椅子から立ち上がると、わたしの側に来て、少しずれていた額の上のものを直してくれる。
 多分、タオルで包んだ保冷剤だと思う。
「穂波君、どうして?」
「本田さん、ボールに当たって気絶しちゃったんだ。それで俺が看病を任されたってわけ」
「そうなの?」

 身体を起こそうとすると、少しだけ腿の辺りがつきん、と痛んだ。
 わたしが眉を寄せたのに穂波君は気づいたのか、
「無理はしないほうが良いよ。本田さん、その場で倒れて体打っているから」
 そう声をかけつつも、手を貸して起こしてくれる。

「俺が間に合えば良かったんだけど。あのボール、男子部の奴が軌道外しちゃって。ごめんね、女の子なのに……」
 とても申し訳なさそうに穂波君は言う。
「大丈夫だよ。だてに運動部してないし、ドッジボールだと顔面はセーフだしね」
「でも……」

「穂波君悪くないんだもん。元はといえば……」
 とここまで言いかけて、大事なことに気が付いた。
「火恩寺君をどうにかしなくちゃ!」
 いきり立ったら、ピキピキッと腿の筋肉が痛んだ。