「愛優」
肩を叩かれて目を開けると、車は駐車場に停められていた。
体の芯から湧き上がる寒気に身震いすると、毛布を渡された。
「上がるな、これは」
独り言のように呟いた声がしっかり聞こえていたが、聞こえないふりをしておいた。
私だってそんな気がするからだ。
支えられて車を降り、先に行くパパの後を追う。
「帰ったら熱測ってよ」
「…うん」
「朝から体調悪かったの?」
「…気のせいだと思ってた」
「悪かったのね」
「…ごめんなさい」
「仕方ないけど」
「お仕事抜けてきたの…?」
「気にしなくていいから」
「…ありがとう、迎えに来てくれて」
*おわり*


