あの二人が声を掛けてくれなかったら…
人通りの少ない夜道に目を移し、ふとそんなことを考えた。
「奏太のこと覚えてた?」
「…覚えてた」
「そっか。偶然ってあるもんだな」
「ちょっと情けなくなった…自分一人でどうにもできなくて」
「しつこい相手が悪い」
「そうだけど…もっとハッキリ断れたら良かったのかなって」
「いや…怖いよ。愛優の気持ちわかる」
「そうかな…」
「やれることはやったんでしょ?」
「そのつもりだった」
「それで十分」
「…うん、ありがと」
もらったココアのボトルを大切そうに握りしめている。
よほど嬉しかったらしい。
「奏太先生優しかったでしょ」
「うん…落ち着くまで隣に座っててくれた」
「…なんか話したの?」
「小さいときの話もしたし、学校の話も…二人の話もした」
「なに、どんな話」
「家でも仲いいって話」
「つまり余計なこと」
「ふふ…悪気はないです」
声がどうも眠たそうなので顔を見たら、瞼が今にもくっついてしまいそうだ。
「寝てていいよ」
「んー、寝ない…」
「まだちょっと掛かるし」
「大丈夫…寝ない…」


