*奏太side*
「ごめん」
スーツに身を包んだ蒼が、一度深く頭を下げた。
「やめてよ」
「いや…本当にありがとう。よく気づいたね」
「何度も首振って断るところを遠目に見てたからさ。愛優ちゃんだって気づいたのは愛香なんだけど」
車から降りた彼女が少し恥ずかしそうに顔を伏せ、蒼の元へ。
「ごめん、遅くなって」
「ううん…」
一度は落ち着いていた呼吸だが、今は背中を見るだけでハッキリわかるほど息が浅い。
愛香と話している間は気分転換になっていたのだろうが、再びの過呼吸に足取りも重たくなる。
「帰ろう、先車乗ってていいから」
そんな愛優ちゃんの背中を少し擦った蒼が、後ろに止めた車へ乗るように促した。
蒼の言葉に頷いた彼女が、大きく肩で息をしながらこちらを向く。
「ありがとうございました…助けていただいて」
そう言って頭を下げると、微かに口角を上げた。
「気をつけて帰ってね」
「あの、飲み物ありがとうございます…ココア大好きだから嬉しかった」
「良かった、無理しないで」
「はい…」
はにかむ愛優ちゃんを少し抱き寄せた愛香が、背中を擦りながらもう一本ココアを手渡した。
「よかったら持って帰って」
「え、でも…」
「ゆっくり休んでね?寒かったから」
もう一度頭を下げた彼女は、蒼と一度目を合わせてから車に乗り込んだ。
「大きくなったね、久しぶりに会ったからびっくりした」
「おかげさまで」
「しんどそうだから早めに帰ってあげて」
「わかった、お礼は今度する」
「だからいいって、大丈夫」
「寒い中ありがとう、本当に」
もう一度頭を下げた蒼が、駆け足で車に戻るのを見届けた。


