*奏太side*
冷たい雨が降り出し、吐いた息が白くなった。
手を擦りながら俯く彼女が、電話を切る。
「父が迎えに来てくれるので大丈夫です」
「そっか、よかった」
「寒いから車で待ってる?雨も降ってるし」
愛香の問いに少し悩んだ様子を見せたが、「お願いします」と微かに口角を上げた。
買い物袋を揺らしながら歩くこと数分。
車のキーを開け、後部座席に手を向ける。
「ごめんね、ちょっと寒いけど。暖房効くまで少し掛かるかも」
「すみません…こんなことになっちゃって」
「全然大丈夫だよ。気にしないで」
頷きながら少し笑う表情に、強く見覚えがあった。
そっくりだな、どちらにも。
車の座席に座ると、冷えた手を何度も擦り合わせながら少し浅い呼吸を繰り返す。
「大丈夫?ちょっとしんどいでしょ」
「大丈夫です…寒いだけです…」
マフラーに顔を埋めたまま、もう一度首を縦に動かす。
髪の毛で顔を隠すように俯いたが、指先で目尻を拭ったのがわかった。
「大丈夫そう?」
飲み物を手に戻ってきた愛香が、不安そうに首を傾げる。
「ホッとしたのかも」
「…泣いてるの?」
「うん、ちょっと」
「やだ、可哀想。温かいの飲むかな?」
再び車のドアを開け、飲み物を渡す様子を横目に携帯電話を確認する。
連絡はまだないな。


