「彩菜」
肩を叩かれ、ハッとした。
「あ、ごめん…」
「大丈夫?思い詰めてない?」
「うん、むしろ…」
スッキリした…
「そっか。何があったのかはわからないけど、彩菜がそれでいいのならいいと思う」
「うん、ごめん。相談に乗ってくれたのに」
「友達でしょ?」
「ふふ…そうだけど」
校門を出たところで、菜々が一度立ち止まる。
「なに?」
どうしたの…
と言いかけて、菜々の視線の先に気がつく。
それは、先輩と女の子が隣り合わせで歩いているところだった。
「相手、本当にいたんだ」
ポツリと菜々が呟く。
少し前の私なら、こんな光景は見ていられなかったかもしれない。
「なんか、当然って感じだよね」
「…なにが?」
「だから、あの子で当然だなって」
「…うん、そうかもね。当然かもね…」
菜々が私に気を使っていることは分かっていたが、同意してくれる方が楽だった。
遠目からでもわかるほど大きな瞳、溶けてしまいそうな白い肌。
風に踊る髪が肩に流れ、周りの視線が無意識に彼女へ向けられているのがわかる。
それにあの日、声まで掛けてきたのだ。
謝る必要などなかったのに、私に頭を下げてきた。
先輩が選んだのは、そんな優しい彼女なのだ…
「可愛いね、天使じゃん」
菜々がそう言い切って笑ったので、思わず何度も頷いた。
もはや悔しくもなんともない。
そんな彼女に時折笑顔を向けながら、隣を歩く初恋の先輩。きっと永遠に、片思いの先輩。
叶わない、実らない。
それでいいんだ。
憧れ止まりの相手でも。
*おわり*


