そういうことだったのか…。
さっきまで他人事のように見ていた光景に関わることになるとは、思ってもいなかった。
『倒れた生徒』とは、季蛍のことだったからだ。
友人らしき女子生徒が背中を擦っていたが、それすらも嫌だと拒むように首を横に振っている。
周りも本人も、明らかにパニック状態だったのだ。
「校内に運ぶぞ」
冷静だった体育教師が季蛍の名前を呼んだ。
彼に「大丈夫」だと季蛍が声を振り絞る様子が見えた。
この状況下でここにいることを選び、運ばれることを拒絶したのだ。
理由は先生にもわかっていただろう。
けれど放置できるはずがなかったのだ。
「先生!彼氏!」
さっき声を掛けてきた女子生徒が叫び、視線が集まる。
「お願いできるか?」
「はい」
一度、背中に手を触れた。
名前を呼び、頷いたのを確認する。
右手を肩へ回し、左手を膝裏へ。
ゆっくりと体を持ち上げる。
苦しさからか、季蛍の手がシャツを掴んだ。


