「先生!」
室内の静寂が破られたのは、私が入室してから20分が経過したときだった。
グラウンド側の裏扉から、先生を呼ぶ声が聞こえる。
ここからじゃそれが誰なのかはよくわからない。
「喘息の発作が…、いま連れて来ます」
息を切らしながら話す男子生徒は、少し焦っている様子だ。
「蒼くん、表から入れる?」
「はい」
蒼くん?
腰を浮かせて身を乗り出すと、もうそこに姿はない。
しかし確かに先生は彼をそう呼んだ。
もしかして、もしかして…
ドクン、ドクンと脈が早くなっていく。
声──
息を切らしていたあの声は、あの日のあの時の…


