「失礼します」
ノックをして中に入ると、先生が生徒の手当てをしているようだった。
「はーい」
手を止めて振り返った先生が、ほんの少し笑顔を見せた。
「珍しいね、彩菜ちゃん」
「どうぞ」と言われた場所に腰を下ろすと、手当てを受ける男子生徒が知り合いだということに気がついた。
「洋?」
「あ?あぁ、彩菜」
「どうしたの?それ」
「転んだんだよ、昼休みに」
「…なにそれ」
小学生じゃあるまいし…と言い掛けた言葉を飲み込む。
「なんだよ」
「…いや、別に」
「そっちこそなんで来たの」
「ちょっと…体調悪くて」
「あぁ、仮病か?」
「違うから…!」
反射的に大きな声が出てしまい、先生に人差し指を立てられる。
「ごめんなさい…」
「洋くん、確信がないのにそんなこと言うのは良くないよ」
「だってコイツ寝てるんですよ、授業中に」
「はい、終わった。授業戻って」
「…はーい」
不貞腐れた様子の洋が先生にお礼を言い、扉がパタンと閉まる。
静まり返った部屋の空気に、思わず俯いた。
「心無い言葉は嫌よね」
先生が少し呆れたように笑うと、流しへ手を洗いに行った。


