「ちょっと、大丈夫?」
一限目終了後、窓の外にやっていた視線を戻すと、菜々が驚いた表情で言った。
「顔色悪いよ」
「あ、うん…ちょっと眠れなくて」
「え、大丈夫なの?」
「全然大丈夫…」
朝から頭がボーッとしているのは事実だったが、これも寝不足のせいだ。
「考え事?」
「うん、それもある…」
「それもって、他に何かあるの?」
「いや、それがさ…」
確かに考え事をしていて眠れないのは事実だったが、それよりももっと明白な原因はあった。
「コーヒー」
「そう、コーヒー」
予想外の回答であったのか、菜々はちょっと苦笑した。
「それで眠れなかったのね…」
「たぶん…寝る前にも少し飲んじゃって」
「彩菜、飲めないんじゃなかったの?」
「うん、飲めないよ。自分でもよくわからない」
結局のところ、私の感情は
自分でもよくわからない──
昨日の帰宅後、実際はスッキリしていた。
菜々の言葉で心の整理がつき、忘れよう、そんな気持ちにすらなっていただろう。
それなのに今朝は一限目から外を眺め、勝手に目線が彼を探す。
やっぱりこれは…


