「お待たせしました」
甘い香りとともに、テーブルにパンケーキが運ばれてきた。
生クリームとイチゴが乗ったシンプルな見た目だが、特徴はこの分厚い生地。
ナイフを入れるとシュワッと小さな音がはじけて、艷やかな断面が現れる。
「おいしそう」
半分に取り分ける様子を見ていた季蛍が、無意識であったかのように呟いた。
「いい匂いする」
「生クリーム乗せる?」
「うん、ちょっと」
「…はい、どうぞ」
「ありがとう」
切らなくてもほどけてしまいそうな生地にフォークの先を入れ、口の中にそっと押しこむのを見届ける。
「ん、んん…」
その味を深く感じるように目を瞑り、頬の筋肉を緩める。
「おいしい……」
その顔を見て同じようにフォークの先を口の中に入れ、舌の上でシュワシュワとほどけていく生地のやわらかさを感じる。
「本当だ、おいしい」
「こんなお店があるって知らなかった」
「気に入った?」
「うん、とても。ありがとう、連れてきてくれて」
「よかった、そんな顔してもらえて」
「…どんな顔?」
「おいしい〜幸せ、って顔」
「してた?」
「してたよ」
「ふふ…でも、それは本当」
まともに食べているところを久しぶりに見たので、頬を綻ばせて食事を楽しんでいたのがとても嬉しかった。
「また来よう。今度は違うメニューにして」
「うん、また来たい」


