後を追うかどうかに迷いがあったのは、結果的に季蛍が自分を責めるきっかけになるからだ。
"ごめん…私のせいで"
よく言うセリフなので、本当に必要なとき以外は見守る選択肢を取るようになった。
それは俺も、主治医の彼も同じだ。
今回ばかりは見逃せない。
彼も同様にそう思い、追いかけようとしたように。
「季蛍」
廊下を歩いていた季蛍が肩をピクリと反応させて振り返り、少し驚いた顔をして静止する。
「な、なに…」
「処置室?」
「うん…今日は効きがあんまり良くなくて」
「こっち、ついてきて」
「……」
「診察室空いてるから」
一瞬迷いを見せたが、静かに頷いて踵を返す。
「嫌な天気だね」
「…うん。雨、しばらくやまないよね」
「朝まで続くみたい」
隣に肩を並べて歩き、徐々に雨脚が強まる様子を窓越しに見ていた。
「本当は高島が行こうとしてたけど捕まってた」
「そうなんだ…」
「タイミングいいんだか悪いんだか」
「すごい気にかけてくれてたのがわかった…後ろに何度も気配感じたし」
「はは、そうなんだ」
「蒼もいたよね?…何度か」
「…いたかも」
「無言の圧を感じたもん」
「なんで俺だけ」
「ふふ…なんでだろ。蒼のときは蒼ってよくわかる」
笑いながらも小刻みに肩を揺らし、眉を寄せた。


