*季蛍side*
探るような視線がひたすら向けられたあと、蒼は何も言わずに医局を出て行った。
「蒼が怖い……無言の圧力を感じます」
「同じく」
頷いた高島先生が残ったたまごサンドを包み紙のままデスクに置き、椅子を元に戻す。
「食べていいよ、午後の外来行ってくる」
白衣に袖を通しながら彼もまた医局を出て行き、残されたサンドイッチに手を伸ばした。
食欲は全くないわけではなかったが、買いに行く気力もそこまでの欲もなかったのだ。
でも、こうして目の前に置かれると食べたいと思える自分がいる。
「…おいしい」
ふんわりと舌の上に乗るパン生地、形がほどよく残った卵、塩気が効いたマヨネーズ。
飲み込む刺激で咳が出そうになるのを抑えながら……
朝からチョコレートしか受け付けなかった体に、足りなかったエネルギーが補給された…そんな気分だ。
よかったのかな、こんなに食べちゃって…


