自席に白衣をかけながら、軽くあたりを見回した。
「あれ、季蛍は?」
「外来行きましたよ」
「あぁ、そうか」
「今のところ特に変わりなさそうですね」
「気圧、何時から変動するんだろ…」
調べようと独り言のように呟いたつもりだったが、仕事中のモニターから顔を上げた高島がスマートフォンに目を移した。
「ピークは正午前後っぽいですね、今から気圧がじわじわ下がって、昼に向かって急降下」
「最悪なシナリオ」
「ですね〜」
肩をすくめながら苦笑した高島が、コーヒーカップに口をつける。
「わかりやすく体に出るからな、季蛍は…」
今朝の様子を思い起こし、椅子の背もたれに身を預ける。
あの時点ではいつもと変わりなく、本人も気配を感じていない様子だった。
強いていえば寝不足気味……いや、考え過ぎか。
「そういえば薬飲んでましたよ」
「あ、そうなんだ」
「一応備えてはいそうですね」
「じゃあまあ、大丈夫か…」
「たぶん…」
頭痛や動悸などの症状だけでなく、喘息の悪化が懸念される気圧変動。
本人もある程度対策は練っているだろうが、“ちょっとくらいなら大丈夫”を積み重ねるクセがあることを俺は知っている。
そう、そこの主治医もよく知っている……


