*蒼side*
家に着くと同時にメッセージが入る。
"大丈夫"
季蛍からの返事はたった一言。
「体調どう?熱下がったかな」
数時間前に送ったこのメッセージに対する返事なのだが、思うに状況はそう良くはないだろう。
流行りのしぶとい風邪に喘息、朝からベッドに沈み込んでいた。
帰宅した音で目が覚めて返事を返した、そんな具合だろう。
寝室を覗き、暗闇の中にスマートフォンの光があることを確認する。
「季蛍」
「ん、おかえり…」
「アイス買ってきたよ」
「ありがと…」
「食べたいものない?買ってくる」
「大丈夫…ありがとう」
「わかった」
ベッドの横には吸入器と飲み薬を何度か飲んだ形跡があった。
何度かの発作が起きれば体力は奪われる。
無理を言わずに少し寝かせておこう。
…とドアを閉めようとしたが、のっそりと上半身を起こすのが見えた。
「ごめん…」
「ん?」
「やっぱりゼリー買ってきてほしい」
「いつものでいい?」
「こういうゼリーがいい…」
「…」
「こうやって吸うやつ…」
「あぁ、こういうの?」
身振り手振りで伝えようと頑張っていた季蛍が、嬉しそうに何度か頷いた。
「わかった」
「ありがと…ごめん」
「いいよ、全然」


