「じゃ、任せた」
こちらへアイコンタクトを送ると、季蛍の背中を優しく叩いて診察室を出て行った。
「いいの?一人で」
「はい…私がそうお願いして」
「そうなんだ、珍しい」
「…」
「今日寝れた?」
「うーん…あんまり」
「うん、そんな顔してる」
「最近眠れなくて…」
「それじゃつらいでしょ、仕事来るの」
「大丈夫です…仮眠くらいはできてるし」
「考え事しちゃうの?」
「そんなつもりは…でも、毎日横になってるだけで朝が来て」
「寝れないのね」
「…はい」
「食事は?」
目を伏せたまま返事をやめた季蛍が、少し気まずそうに顔を上げる。
その沈黙が何よりの答えだったのだけれど。
「行くんでしょ?これから」
「行きます…それも蒼の作戦だから」
「作戦って」
思わず笑ってしまった。
季蛍は乗り気でなかったのだな。


