「ちょっと小さめに作るのは反則?」
「いいでしょう、認める」
「やったー」
笑いながら鉄板に生地を流した陽が、フライ返しを手に取った。
「手前に……こう、手前に……」
鉄板の横で動作を繰り返し、そのときを待ち構えているようだ。
「…陽、今度はたこ焼きやる?」
「うん、やりたい…!」
「回すだけならリスクはないね」
「…でも、ひっくり返すの失敗したら丸くならないよ」
「そんなことある?」
「あるよ!だって前に季蛍ちゃんとたこ焼きパーティーしたとき…」
当時のことを少しずつ思い出したのか、じわじわと来る笑みを抑えきれていない。
「……中は生なのに外が焦げてきちゃって、無理やり火を通して謎の食べ物が出来上がったの」
「嘘だろ…」
「本当!……であってほしくはないけど、残念ながら本当」
「食べたの?」
「うん、もちろん。二回目から鉄板をよく温めてから焼いたら、ようやく丸くなった」
「はは、中は?」
「火通ってたし、外もカリッとしてて美味しかった」
「じゃあ結果成功したんだね」
「うん、でも未だに思い出す。たこ焼きではない"何か"を」
ケラケラと笑っていたらそのときが来たらしく、少し立ち上がった陽が鉄板の上に両手を出す。
「…失敗したたこ焼きが頭に浮かんでくる」
「ふっ……頑張って」
小さく深呼吸した陽が生地の下にフライ返しの先を入れ、呼吸を合わせて上に持ち上げた。
無駄なくくるりと回った生地がパタン、と同じ場所に落ちると、再びジューと焼き音が始まる。
「お、上手!」
「完璧…?」
「完璧!俺よりうまい」
「ふふ、私が言わせてる」
「ううん、本心」
陽が焼いてくれたおかわりのお好み焼き。
軽くトッピングを掛けたあと、箸で一口サイズに切り分けて口の中へ。
「いただきます」
生地は一枚目と何も変わらない。
ただ、焼き加減は最高だ。
両面カリッと焼いてあり、中も焼きすぎることなくちょうどよい。
「…うん、すごく美味しい」
「本当?でも生地は同じじゃん…」
「変わるよ、焼き方ひとつで」
「そうかな?」
「だってほら、たこ焼きだって」
「ふふ、たしかにそうだね」
「うん…おいしい」
「よかった、返すのうまくいって」
両手で返す仕草をした陽が、目を細めて笑った。


