*港side*
二人で選んだベビー用品を購入したあと、ショッピングモール屋外の開放的なエリアを散策することにした。
カフェや雑貨店、ファッションブランドなど、他ジャンルの店が左右に立ち並んでいて、午後の優しい風がシャツの裾をわずかに揺らす。
明確な目的はないが、陽と肩を並べて歩くこの開放的な空間が心地いい。
「あのお店も見ていい?」
と楽しそうにしていた陽の歩く速度が落ち、心なしか表情が曇っている。
休み休み動いていたとはいえ、少し疲れが出てくる頃。
早めに退散しよう、と声を掛けようとした矢先、陽の指先が背中のシャツを握ったのがわかった。
握るまでもなく、触れる……それくらいの力で。
「港、ごめん……ちょっと座りたい」
「わかった、もう少し歩ける?」
今にもしゃがみこんでしまいそうな腕を取り、少し先のベンチを目指す。
「座れる?うん、ゆっくりね」
腕を支えながらベンチにお尻をつけるまで見届けたあと、目の前にしゃがんで軽く顔を覗き込んだ。
額にじんわり汗がにじんでいる。
「ごめん、気づかなくて」
「ううん…私もごめん、一瞬目眩がしただけだから」
「ちょっと無理しすぎたね、疲れが出たのかも」
「…平気、もう治まった」
「お水飲みな、蓋開けた」
「ありがと…」
ペットボトルを少し傾けて喉を動かした陽が、口周りの水分をハンカチで拭き取る。
「…もう大丈夫。ごめんね?びっくりさせちゃって」
「もう少し座ってたら?」
「まだ全部見てないもん…」
「全部見るの?見きれるかな」
ここのショッピングモールは敷地がかなり広く、建物が二つに分かれていて連絡通路でつながっている。
この屋外エリアはその中央に位置しているのだが、まだ連絡通路の向こうにすら行っていないのだ。
自信ありげな陽の表情が目に入り、思わず笑ってしまう。
「ふっ…あんまり無理しないでさ」
「…やっぱり無理かな?」
「うーん、広いよ?向こう側も」
「……そっか」
「陽がよくても、俺がもたない」
「ふふ、じゃあやめる」
クスッと笑った陽がハンカチで額の汗を拭い、もう一口水を飲んだ。
「ベビーカー決まったらまた来るよ。そのときに体調が良かったら行こう」
「…うん、そうする」
「暑い?」
「ううん、冷や汗」
「もう大丈夫?気分」
「大丈夫……」
その口調には未だ迷いがある。
「なんか甘いもの食べる?ちょっと休憩」
「うん、食べたい…」
「座ってて。買ってくる」


